忍者ブログ
超きまぐれに更新してます。 さて、風丸をもぐもぐしようか。
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

嫌いなもの。不味い料理。
好きなもの。読書。チョコ。乱闘とクディッチ
ロイの作ったもの全て。

「畝那、畝那。」

肩を揺らされた振動にゆっくりと目を覚ませば目に入ったのはグリフィンドール特有の鮮烈な紅色が視界を埋める。
かすかに香るチョコの甘い匂いに思わず目がとろけてしまう。

「ロイか、どうかした?」
「どうかした、じゃねえよ。こんな時間までここで寝てんな。探しただろ」
「おや、もう10時かい」
「飯は?」
「食わない」

そう言うと隣の席に座った彼は大きなため息を吐いて私の顔を覗き込んだ。

「今日は何をしたんだ?」
「クディッチの練習で後輩をめたくそにしごいて、乱闘してたから上級生らしく素手で止めて、ここで読書。」
「腹は減らねえのか。」
「あいにく、イギリス料理はきらいでね」
「しってる。」
「ロイの料理や、日本の母さんの料理なら食べれるんだがな。」
「しってる。」

クスクスと笑いながら、俺の冷たい指先にふれるロイの指の温かさがくすぐったい。

「一人、殴ったんだろ」
「聞かないでおくれよ」
「話によれば、お前を罵ったとか。」
「知ってるんじゃないか。お前は意地悪だなあ」

絡められた指をするすると離し、他人を殴ってできた傷を舌で這わせれば唾液が傷口を浸食し、ひりひりとした痛みが右手に広がる。それを訝しげに目を細め見ているロイを傍目に俺はポツポツ口をひらいた。

「俺はこの血が好きなのに、如何せん他人は理解してくれない。」
「畝那」
「蛇の子達は難しい。理解のしようがない。俺ばかりがつらいよ」

次の瞬間にまばたきをすれば、先ほどまで手のひら2つほど離れていた顔が鼻先まで近づいていて思わず声を上げた。

「ロイ、」
「畝那には、俺がいるだろう」
「重たい言葉だね」

軽く唇が交われば、彼は小さく息をつく。レモンの甘酸っぱい香りから、彼はきっと先ほどまでレモンキャンデーを食べていたのだろう。
そんな余裕綽々とした考えがあっても、どこか先ほどの行為に焦る自分もいた。顔を見上げれば紫水晶のように綺麗な紫の瞳がこちらを一直線にみていて、逃げようがない。


「ロイ」
「ごめん、畝那。でも」
「部屋に戻ろう、起こしてくれてありがとう。あと、…いや、いい」
「畝那、」
「おやすみ、ロイ」



俺はあの時何が言いたかったのか。軽々しく交わした言葉に結局重みなんてなかったのだ。所詮は子供の戯れにすぎない。
わかって俺は口を開かなかった。だって悲しいだろ。自分の気持ちをあんな風なタイミングでつたえるのって。
まあ、なんやかんやでロイとは仲良く卒業して、まだ友達なわけで。

「畝那、生きてるか」
「1ヶ月振りだね。やっと脱稿したのか?」
「なんとか、ね」
「そりゃあ良かった。茶でも入れるよ、中にお入り」
「サンキュー」

マグル界や魔法界で売れっ子作家をやっている奴は脱稿したあとや原稿に手がつかなくなったとき、息抜きといわんばかりにここにきて、弟のレイを撫で回し、俺と茶を交わす。
それがこいつがここに来た日の日常。他愛もない会話をして、奴が作った菓子を食べて適当に時間を潰して追い返す。若しくは泊まり。
なんら他の親友と変わりはない。だから感情の起伏に一々杞憂してしまうことなど無駄なことに変わりはないのに、どうも私は無意識のうちにこの親友に対して無駄なことをしたいそうだ。
そうかんがえたらなんだか悲しくなった。

「畝那、今日はガトーショコラ作ってきたぜ?」
「それは嬉しい。お前のケーキ、どれも好きだよ。甘くてすぐに溶けてしまう」
「そりゃあそうだろ、お前への気持ちを込めて作ってんだからな」
「冗談言える余裕あるんだな。ほら、紅茶」
「ありがとさん。冗談でんなこというか。」
「はいはい」

しかし最近ロイはやたらと仄めかすような事をいう。それに対して俺はなんとも言いようがなく冗談として受け取ることしかないのだ。綾浪 畝那という人物のある一部を受け入れてしまわなければいけなくなる。だから返事を述べることはない。
ロイも気付いているのかそれ以上は言及はしないのだ。
そういうぬるま湯みたいな関係が一番好きだと思わせていたのだ。

「畝那、ほら口あけろよ。」
「なにをくれるんだい?」
「作ってきたチョコレート」
「あーん」

そう言って口に放り込まれたのは甘くてとろけそうなロイ特製のミルクチョコレートだった。

「幸せ。ロイのチョコレートまじ好き」
「俺は畝那がすき」
「冗談およしよ、ほらもういっこおくれ」
「冗談じゃなかったら?」

そう言って、昔みたいに気がついたら目の前に紫水晶のような綺麗な瞳が俺を見つめていた。昔よりかはまだ体力のある俺を容易く抱き寄せ、逃がすこともさせない腕力は本当に家にこもって文章を書いてるやつのものなのかと軽く混乱させられる。

「ロイ、」
「冗談じゃなかったら、畝那は聞いてくれるのか?」
「じゃあ、ロイ。俺がお前を好きだと認めたらどうするんだ、どうにも、ならないだろう」

チョコレートの香りをした呼吸が口先に交わる。それだけで俺は思わず瞳をとろけさせてしまいそうになる。ちゅ、と唇だけのキス。リップ音に思わず目を見開けば逃がすまいとロイの唇は俺の唇を貪った。

「っロイ、」
「認めたらってことは、畝那は俺のこと好きってことだよな。」
「馬鹿じゃない奴は嫌いじゃないが、お前のそう言う所はきらいだっ、」
「好きなくせに」




ショコラティエに酔わされたパリジェンヌ
(そんな可愛く納まってはくれなそう)
(そんなかわいくないだろ)

そういって溶け出したチョコは舌先に絡みつく

拍手

PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
カレンダー
09 2024/10 11
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31
プロフィール
HN:
冬四朗@冬雪
性別:
女性
趣味:
昼寝と勝手に叫ぶこと
自己紹介:
関西在住のニートになりたいダメ人間。最近はイナイレとRKRN、オリジナルにお熱。イナイレはもう皆嫁においで状態。RKRNは成長は組やばくて死にそう。とりあえず、みんなお嫁においで。ボカロとかもすきです。ハチさん大好きすぎて死にそう。だいたいは音楽でできています。自由気ままにバンドとかしてます。ただし、音信不通が普通です。めんどくさがりなんです。だいたい気が向いたらメールとかも返します。めんどくさいんです。
対人スキルが皆無に等しいかもしれませんが、どうぞよろしくお願いします。ついった→http://twitter.com/toipetto
/



最新コメント
バーコード
アクセス解析
カウンター
忍者ブログ [PR]