まるで、夕闇に溶けるように、息を吸い込んだ。
赤い、赤いリボンが風に一つ揺れる、揺れる。
まるで見たことのあるような既視感を思い出し、グラリ、グラリと視界が歪む。

一体、視界の先にあるものは何なのか。皆目見当もつかない。
ただ愛しい色をしているのだけは理解出来た。
蒼い、蒼い色。地上を目指した魚が恋をした色。

「――さん」

ただ声だけが溢れ出た。だが、その言葉を音として理解ができなかった。言葉として理解できなかった。
それが悔しくて涙が溢れた。

この世界はなんて残酷なのだろう。
ただ、涙が出るばかり。
こんな世界、はやく無くなればいいのにと、枯れた声が耳につく。

願うならばと、僅かにしか動かぬ足をただただ、ひたすらに水辺に向かう。


そうして　私は 血のように赤い海に溶けて、泡になった。









「あなたは、いつも１人で逝ってしまう」

何度繰り返しても報われないその未来は何時になればスルリとほどけるのだろうか。今は悲しみに溺れるばかり。
ああ、次こそ君と共に逝ける夢を、


輪廻
(とある人魚の夢語り)