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超きまぐれに更新してます。 さて、風丸をもぐもぐしようか。
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思えば物心ついたときから俺は周囲に期待をされていた。

曾祖父は例外だったが俺は魔法使いの家系だ。中でも俺は生まれながら魔力も強く、頭の出来も身体能力も他の子どもより格段に上。期待するなという方が無理な話で、天才、鬼才と持て囃され、所謂英才教育というのを受けて育った。
残念なことに思考の方も妙に大人びていて、無意味に反発するより甘受することを選んだ。
子どもらしく遊ぶこともあまりなく、親からの愛もあったにはあったがおよそ普通の愛ではなかった。
ただ目の前に出された料理を食べるだけのように日々を過ごした。口に含み、咀嚼し、飲み込む。その動作の繰り返し。

確かにどこかで逃げたい、とも思っていた。けれどそれをしなかったのは俺の弱さだ。多分おそらく俺は変化が怖かった。変化しない世界の中で変化を望み、同時にその得体の知れないもの恐怖していた。

アロイジウス=インガムに与えられた役を演じていれば周りは満足する。
抵抗を止め周りの作った道の上を歩くのは、少なくともあの時の俺にとっては息をするように簡単で当たり前のことだった。
身動きが取れない程の重圧の中で、そこに光が射し込まれたのは弟が生まれたとき。
自分は初めてそこで己がボロボロであることに気がついた。頑張ること我当たり前すぎて壊れそうだったことに漸く気づけた。
屈託無く伸ばされたもみじのような小さな手が、確かに俺の手を掴んだ。
きっとそれが俺にとっての初めての休息だった。


やがてホグワーツに入学して――畝那に出会った。
ホグワーツに入学してからの俺は満たされていた。周囲からの期待や悪意はかわらず重かったが信頼できる友人と尊敬する先輩や教師、そして何より畝那がいたから俺は幸せだった。

畝那が好きだった。何で好きになったかと訊かれればよくわからないとしかいいようがない。けれどあいつのいいところも悪いところも全部愛しいと思ってしまうほど俺は畝那が好きだった。
ただ、俺は戯れのように畝那に愛を囁いてはいたがこのぬるま湯のような関係を壊す気は全くなかった。

畝那が起こす乱闘を止めるも、まあ実際は止めるという名目で若干混じっていたのだが、それも楽しんでいた。他人との喧嘩は後から面倒になるからと、むかつくことがあると兎に角片っ端から本を読むような奴だったから偶の喧嘩は正直楽しかった。

クィディッチも好きだった。飛んでいるときは他のことを考えないで済むし、チームメイトもいい奴ばかりで、それに空飛ぶのとは楽しいのだから。

そう、俺は確かに満たされていたのだ。


そうして六年の月日が過ぎた。六年生でいることも残り1ヶ月を切り、このぬるま湯に浸かったような生活も、もう一年ほどしかないのだと思うと何となく虚しかった。

「なあロイ、今少しいいか?」

そんな時だった。×××に話しかけられたのは。

「なんだ、試合のことか?」
「いいや、そうじゃないんだが。その、ここじゃあ話しにくいことなんだ」

×××は同じ寮で一年の頃から仲もよくクィディッチのチームも同じ友人だった。友人、だったのだ。
あの時の×××の様子がおかしいことに俺は気付いていた。だがそれは少し前からあったことで×××自身にそれとなく聞けば、これは一人で考えなきゃいけないことなんだと苦笑しながら答えていたから、もしかしたらそれについての相談なのかと特に気にも留めていなかった。

ぎしりと蝶番がきしみ、次いで×××が杖をふり錠の掛かる音がした。×××は無言で、こちらを振り返ろうとはしなかった。いきなりどろっとした嫌な感覚が肌を刺した。まるでボタンをかけ違えたような妙な違和感が周りをとりまく。声をかけようと口を開くと×××は振り返り、俺は戦慄した。彼は、歪に笑っていた。常ならば優しさを湛えるはずの目は濁り冥い光を灯すばかりで、何もうつしていない。
机の倒れる音と拘束の呪文が響き、背中に鈍い痛みを感じた。だが俺には何が起きたのか意味がわからなかった。いや、わかりたくなくてわからないフリをした。

「なあ、おい。何でそんな顔してんだよ」

感情が削ぎ落とされたような声で×××は言った。見上げたその表情もその声しずかで、なのにやっぱり目だけはぎらぎらともえている。
うまく呼吸ができなくなった。ああ、その目の炎は、まっくろなそれは、嫌悪と嫉妬。

「聞いてるのか?聞けよ、すかしてんじゃねえよ。何なんだよ……何なんだよその目はっ、その顔はっ!ははっ、やっぱりお前は俺を見下してんだろ?俺のこと陰でわらってんだろっ!?」

声を言葉として認識できなくて、只々これが夢であってくれと願った。そんなことが有るはずないと背中の痛みが訴えるのを、理性の考えを無視して。

「お前はいつもそうだ!お前といると俺が惨めになる。邪魔なんだよ……俺がどんなに頑張っても、いつもお前は俺の前を悠然と歩いてる!当たり前みたいに全部をかっさらってく!主席も!シーカーも!キャプテンも!」


「アヤナミだって!!」


声を荒げて叫ばれた言葉に、じくじくと脳をゆさぶられる。何故だ、どうして、どうしてこうなった。何で、何で、何で「彼は俺の隣にいるべき人だ!アヤナミもお前なんかといて楽しいわけがない。彼だけじゃない、お前の周りにいる全ての奴はお前のことを嫌ってる、憎んでる、疎んでる!他でもない俺が言うんだ、それが真実なんだ……お前のことを好きな奴なんていないんだよっ!」

×××は、×××だった男は右手に持った杖を振り上げた。口から零れる呪文を、俺は知っていた。

それは、おぞましい禁呪、ゆるされざる呪文。

空間にぽっかりと穴が空いたような黒いナニカを視界に掠めた刹那、右足が灼熱の激痛につつまれ、咽喉からは人が出せる限りをこえる絶叫が轟いた。



その後何があったのかは覚えていない。途切れ途切れの意識の断片の中で魔法は不完全で暴走し術者は片腕のみを残してこの世から消え去った、ときこえた。
思考の海の中で、どうしようもなくなった。

人に欺かれることなどよくあることで。けれども、でも、×××は――友達だった。×××は、親友と言っても過言でないほどの、友だった。

真っ暗な闇に堕とされたような気がした。消えてしまいたかった。俺という存在を壊してしまいたかった。全てに絶望した。もう終わりにしてしまいたかった。
ただ、手に触れるあたたかさだけがぎりぎりのところで俺をつなぎ止めていた。

やっと俺が目覚めたとき、心は磨耗しひび割れすっかり壊れてしまった。
左目は色をうつさず、あるはすのない右足は痛みを叫ぶ。友も、未来も、心もなくして、あるのは虚無だけだった。
だが畝那のことだけがちらりと脳裏に去来した。それを自分は無理やり奥に押し込んで鍵をかけた。
俺を見て涙をこぼす彼に俺は、手を握りかえすことさえできなかったのだから。

ホグワーツでそれ以上手を尽くすこともできず、俺は家に帰ることになった。義足は慣れず歩くことさえ出来ず、俺は部屋から出ることをやめた。
両親は元の俺に戻ることを願って、最初のうちは毎日のように扉を叩いていたが次第にそれもなくなった。
そんな中で弟だけがずっと俺のそばにいてくれた。家にいるときはずっと俺の部屋の前に座り、ただ何もせずそこにいてくれた。たまに手作りと思しき料理がドアの前に置かれて、最初は不格好だったそれに、なんだか泣きたくなった。
少しだけ心が落ち着いた。

扉を開くまでに半年を費やした。
迷惑をかけてすみません、もう大丈夫ですと微笑めば両親や周囲はよかったと安堵した。
弟だけが心配そうに俺を見上げていて、情けなくなると同時に、どこかで感謝していた。

その頃からリハビリと、ちょっとしたアソビと、文章を書くようになった。
思い通りになる世界が欲しかった。紙の上は無限であり全てがあった。書いて書いて書いて、何の気なしに応募したそれが賞をとったと聞いても、ただ書き続けた。


一年がたった。来年からホグワーツに復学することが決まった。
俺がいない一年の間に、きっとあそこは変わっているのだろうと思うと辛かった。何より、もうそこに畝那はいないのだ。
会いたかった。ただ一目見たかった。もう会えなくなるだろう愛しい人に、会いたかった。





「……なんでここに、」

俺は答えない。応えることができない。

ホグワーツの図書館の奥に、畝那はいた。
ここまで大分無理して会いに来て、でも彼に伝えられることはないと痛感させられた。
畝那の長い髪が揺れる。俺の居なかった一年で伸びたその髪が、否が応でも一年の隔たりを告げた。

畝那が眩しくて眩しくて、目を細めて、笑った。

「卒業、おめでとうごさいます。綾浪先輩」

やっとのことで紡いだ言葉は、みっともなく震えていて。
畝那は泣きそうな顔でお前のそういうところが嫌いなんだと吐き出した。
俺はただ、眩しそうに笑った。
渇いた頬を伝う冷たさに気付かぬ振りをして。


さようなら、愛しいひと。







休学中に書いた本がベストセラーとなり、俺は作家になった。文を書くのは楽しかった。
物語だけでなく魔法書もかいた。マグル向けの本も書いた。
書いても書いても書き足りなかった。
空いた穴を埋めるように書き続けた。


何年かたった頃、ホグワーツの二年生になる弟から電話がきた。
まだ家を出て1日しか経っていないのに何あったのかと心配しながら電話に出れば、弟は常になく焦って、こう言った。


「兄さん、ホグワーツの新しい司書さんね、畝那兄さんなんだよ。ねえ兄さん、俺もう辛そうな兄さん見たくないよ……今会わなきゃ絶対に後悔する、兄さんに畝那兄さんに会いにいって欲しい。兄さん、兄さんっ」

泣きそうな声だった。
憑き物が落ちたような気持ちだった。

俺には、畝那が足りなかった。

弟に心配をかけたと思うよりまず体が動いた。
畝那に、会いたかった。

畝那が好きで、きっと一生好きで、畝那がいないと俺は駄目なんだとおもう。だから。



「会いにいくよ、畝那」


止まった時が動き出すまで、あと少し。




**************
まどさんがすきすぎてつらい^/////^
あいしてるんだから!(^3^)ノ❤

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冬四朗@冬雪
性別:
女性
趣味:
昼寝と勝手に叫ぶこと
自己紹介:
関西在住のニートになりたいダメ人間。最近はイナイレとRKRN、オリジナルにお熱。イナイレはもう皆嫁においで状態。RKRNは成長は組やばくて死にそう。とりあえず、みんなお嫁においで。ボカロとかもすきです。ハチさん大好きすぎて死にそう。だいたいは音楽でできています。自由気ままにバンドとかしてます。ただし、音信不通が普通です。めんどくさがりなんです。だいたい気が向いたらメールとかも返します。めんどくさいんです。
対人スキルが皆無に等しいかもしれませんが、どうぞよろしくお願いします。ついった→http://twitter.com/toipetto
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