柊 麻耶
麻耶は俺の全て。
彼女はきっと甘い砂糖のような血や内臓でできている。涙や、唾液、汚物でさえ、彼女はきっと甘いのだろう。
あの困ったような眉や、唇、全て全て愛おしい。

「麻耶、」
「っ、気安く、呼ばないで、ください…。鏑木くん」
「慧都でいいっていったじゃん」

容姿に不釣り合いなつれない態度、引きつる表情。これは彼女がただのお菓子じゃなくて最高の人間だと言うのを表す感情。

「ふふっ、ねえ、麻耶」
「やめて、ください」



「あの男は、ダァレ？」

君が兄以外にみせる唯一の甘い笑みを奪う奴は。ねえ、ねぇ、俺には教えてくれないの？
君のその青ざめた表情はとっても滑稽だね。その細い腕を引き、俺の腕に閉じ込める。白く艶めかしい首もとに舌を這わせる。汗のひとつ、甘くとろけそう、とろけそう。



赤頭巾にに歯牙をたてた狼
(ああ、これが甘美な味。誰にもない、彼女だけの)




「おや、その怪我はどうしたんだい麻耶」
「駄犬にかまれました」