(壊れるのが怖いのか、否、風化するのが怖いのか。)

その答えを倦ねている。冷たい自分の指先がどれほどの影響を持つかなんてわからない。だが、それに対して後に待つものがどんなものかはよくわかっているつもりだった。

頬に当たる雪の冷たさ、自分の名と同じ風花が舞っているこの空間。
直ぐに溶けて消え失せてしまうこの瞬間を彼女は《綺麗》と言った。
普通の人の感性ならば綺麗なのだろう。だが、俺にとってみれば儚く、残酷に見えた。

雪は人の肌に触れてしまえば直ぐに溶けて流れてしまう。自分も確信に触れてしまえば溶けて消え失せてしまうような人間なんじゃないかと思案してしまう。
そう考えると、俺が溶けてしまったから、彼女は儚く死んでしまったんじゃ、なんて馬鹿なことまで考える。

考えて、考えて、考えて。
やっぱりどうにもならない。







「フォンファ」

紫水晶みたいなでかい目の親友が呆れたように俺をみて、次の授業に遅れるぞ、と告げた。

「今いく、」

そうやって言えばまた歩みは早まる。
ちらりと空を見上げれば薄い風花が空を舞う。


ああ、もっと降り積もっておくれ。
春なんてこなくていい、

そう思えた。

時間なんてとうに過ぎてしまったなんて言えないくらい、俺の中には冷たい彼女の温もりがあった。

「フォンファ、先輩」






捕らわれた鳥
(こうして、過去は俺を絞め殺す)